半導体製造装置メーカーのエレキエンジニア仕事内容【職歴5年目が解説】

半導体製造装置メーカーのエレキエンジニア仕事内容半導体製造装置


このような疑問に対して、半導体製造装置メーカーの現役エレキエンジニアがわかりやすく解説します。

また、半導体製造装置メーカーの現役エンジニアからしか聞けない生の情報をお届けします。

いとー<br>@電気工学
いとー
@電気工学

私は半導体製造装置メーカーのエレキエンジニアです。

実際の仕事内容を紹介します。


本記事を読んで分かること
  • エレキエンジニアの仕事内容
  • エレキエンジニアに活かせる学部
  • エレキエンジニアに活かせる職歴
  • エレキエンジニアに必要な資格
本記事の信頼性
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  • 半導体製造装置メーカーの電気設計エンジニア
  • 特許出願:3件(半導体製造装置の制御技術関連)
  • 資格:電検2種、エネルギー管理士、基本情報技術者
半導体製造装置メーカーとは

半導体デバイスを製造する半導体製造装置を販売する会社のこと


半導体製造装置メーカーとは、半導体デバイスを製造する半導体製造装置を販売する会社のことです。

ちなみに半導体デバイスとは、スマートフォンなどに内蔵される樹脂ケースで覆われたICチップのことです。

勘違いされやすいポイントとしては、
半導体製造装置メーカーは、あくまで半導体製造装置を販売することが目的で半導体デバイスは作りません

半導体デバイスを作るのは”半導体デバイスメーカー”の役割です。


一言で「半導体製造装置」と言っても、成膜装置、露光装置、エッチング装置など様々な種類があります。

半導体製造装置は工程の数だけ、装置の種類があり、一つのメーカーだけで全ての工程の装置を開発することは不可能です。

そのため、各半導体製造装置メーカーで分業して各工程の装置を開発している状態です。

各半導体製造装置メーカーの保有工程をまとめました。

工程日本メーカー海外メーカー
洗浄東京エレクトロン
・SCREEN
・Lam Research
成膜東京エレクトロンApplied Materials
・Lam Research
フォトレジスト
塗布
東京エレクトロン
・SCREEN
露光・現像・NIKON
・Canon
・ASML
エッチング東京エレクトロンApplied Materials
・Lam Research
ウェハ検査東京エレクトロン
・日立ハイテク
Applied Materials
・KLA
ダイシング・DISCO
・東京精密
ワイヤー
ボンディング
・Kulicke&Soffa
・ASM
モールディング・TOWA・ASM
最終検査・Advantest・TERADYNE

表を見て分かる通り、半導体製造装置業界は日本メーカーが強いです。

日本の半導体製造装置メーカーの売り上げ首位は「東京エレクトロン」で世界では第3位です。

世界の半導体製造装置メーカーの売り上げ首位は米国の「Applied Materials」です。

以上、半導体製造装置メーカーの簡単な説明でした。

半導体製造装置の詳細を解説している記事はこちらです。

半導体製造装置とは?【現役エンジニアがわかりやすく解説】
半導体製造装置とは、半導体デバイスを製造するための装置です。半導体デバイスとは、スマートフォンなどに内蔵されている樹脂ケースで覆われたICチップのことです。樹脂ケースの中身は切断されたシリコンウェハです。


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本記事は半導体製造装置メーカーのエレキエンジニアの仕事内容にフォーキャストした内容になってます。

半導体製造装置メーカーのエレキエンジニアの仕事内容を紹介します。

半導体製造装置メーカーのエレキエンジニアとして5年間働いてますので、実際の経験談も交えて解説します。

エレキエンジニアの仕事内容
  • 電気回路図面の作成
  • 電気部品選定
  • デジタル/アナログ回路設計
  • 通信仕様設計
  • 安全審査
  • EMC試験
  • 実機評価
  • 客先トラブル対応
  • 特許出願

ちなみにエレキエンジニア以外の職種の仕事内容は以下の記事ににまとめてます。

半導体製造装置メーカーの技術職種紹介【活かせる学部、職歴は?】
プロセスエンジニア、メカエンジニア、エレキエンジニア、ソフトエンジニアなど多種多様な職種が存在しますが、各職種のエンジニアが協力して1つの半導体製造装置を開発します。半導体製造装置メーカーの現役エンジニアからしか聞けない生の情報をお届けします。

電気回路図面の作成

電気回路図面の作成は2D CADで実施します。

”ボード図面”や”ケーブル図面”を2D CADで作成します。

図面を作成後、サプライヤーに提出して、現物を製作してもらいます。

2D CADでは回路シミュレーターを使用する場合もありますが、比較的簡単に習得できるので、未経験者でも問題ないです。

図面作成と同時にコネクタやコンタクトピンなどの部品選定も実施します。

電気部品選定

以下のポイントから電気部品の選定を実施します。

  • 定格仕様
  • 安全認証
  • 製品寿命
  • 市場の流通性
  • 過去の採用実績

”安全認証”は海外に輸出する際に必要です。

”製品寿命”は10年以上が望ましいです。
半導体製造装置の寿命は10年程度のためです。

”過去の採用実績”は結構重要なポイントで客先でトラブルが発生した部品は新規装置では採用しません。

デジタル/アナログ回路設計

デジタル/アナログ回路設計を実施します。

具体的にはFPGA(Field Programmable Gate Array)というICチップのファームウェア設計を行います。

ファームウェア設計のプログラミングには”VHDL”や”Verilog-HDL”というハードウェア記述言語を使用します。

C言語などのプログラミング言語と異なり、電気回路を意識した設計が必要です。

私は仕事で初めてFPGA設計を実施したので、習得に結構苦労しました。

通信仕様設計

装置内通信仕様の設計を実施します。

半導体製造装置はEtherCAT通信という通信規格を使用しています。

特殊な通信方法なので、基本的に皆未経験で入社します。

EtherCAT通信は高速/高信頼性の産業用オープンフィールドネットワークです。

EtherCAT通信を採用するにあたり”結線方法”や”アドレス割当”などを検討する必要があります。

安全審査

半導体製造装置は操作を間違えると人体に重大な危害を加えるので、出荷にあたり安全審査をパスする必要があります。

具体的には、SEMI規格という半導体産業関連の認証を取得する必要があります。

第三者審査機関に”書類審査”や”実機審査”を依頼します。

EMC試験

装置の出荷にあたりEMC試験というノイズ規格の試験をパスする必要があります。

具体的には、以下のような性能の試験を実施します。

  • EMI(エミッション性能)
    装置から発するノイズの大きさ
  • EMS(イミュニティ性能)
    外部のノイズからの影響の受けにくさ

高周波機器を搭載している場合、ノイズの外部放出が大きいので”エミッション性能”を満足するために様々なノイズ対策を実施します。

実機評価

電気設計業務だけではなく、完成した装置の評価を行うことも多いです。

机上解析では問題がなくても、実機で評価してみたら問題があったなんてことは良くあります。

装置を動かしながら、配線やプログラムを変更したり結構泥臭い仕事です。

客先トラブル対応

客先トラブル対応は基本的にフィールドエンジニアというサービス部門が実施しますが、難易度の高いトラブルは設計側で対応します。

トラブル発生時は電気的問題か否か?を断定できないので、エレキエンジニアだけではなく、他のエンジニアも会議に参加します。

特許出願

新規装置の開発業務中に思い付いた特許を出願します。

新規性のある電気回路で特許を出願することは難易度が高いです。

ただ半導体製造装置は技術力の総合格闘技なので、制御方法などで特許を出願することはそこまで難しくないです。

私も半導体製造装置の制御方法で特許を3件出願しました。

特許庁に対する出願資料は知財部が作成することが多いです。

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半導体製造装置メーカーのエレキエンジニアは結構守備範囲が広いです。
多彩な技術を習得することができます。

エレキエンジニアに活かせる学部は電気電子工学系です。

実際、私の職場では9割以上は電気電子工学系出身です。

学歴は学部卒:院卒=5:5程度の印象で、稀に高専卒の人もいます。

学歴によって初任給が異なります。

学生時代に半導体の研究をしていなかった人がほとんどなので、研究内容により選考が不利になることはないと思います。

エレキエンジニアに転職する場合、回路設計の経験は必須です。

ただ基板設計やFPGA設計の経験までは求められないです。

転職してきた人に聞くと、エレキエンジニアの仕事はどこの会社も共通する部分が多いみたいです。

ちなみに半導体製造装置業界は、中途採用者の割合が多いです。

実際、私の職場では半数以上が中途採用者です。

“同じ半導体製造装置業界から転職してきた人”よりも”全くの別業界から転職してきた人”の方が多いです。

私の職場では”自動車メーカーの生産ラインを保守管理をしていた人”や”車載用通信機を開発していた人”が転職者として在籍しています。

別業界出身者を採用する理由は、技術イノベーションを意識していると聞いたことがあります。

半導体製造装置の開発は技術力の総合格闘技なので、様々な業界の知見を活かすことができます。

半導体製造装置では、EtherCAT通信、高周波電源など特殊な技術を使用するので、知見者であれば、プラスになると思います。

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半導体製造装置の価格は数億円程度なので、装置開発はやりがいがあります。

半導体製造装置のエレキエンジニアに必須な資格は特にないです。
半導体製造装置で使用する電圧は最大でもAC400V程度なので、資格なしで作業することができます。
半導体工場の設備では高電圧を使用しており、作業には資格が必要ですが、設備管理(≠エンジニア)が担当します。

エレキエンジニアとして必須ではないですが、取得しておくとメリットがある資格を紹介します。

  • 基本情報技術者
  • 電気主任技術者3種
  • エネルギー管理士


基本情報技術者
ITの基礎的な資格なので、エレキエンジニアも取得しておいて損はないです。

”OSI参照モデル”や”サブネットマスク”など実際の業務で使用する知識も習得できます。

またソフト技術を理解しているエレキエンジニアは重宝されます。

私も会社の先輩に進められて取得しました。

電気主任技術者3種
電気工学の基礎的な資格です。

電気関連の知識を総合的に学ぶことができるので、オススメです。


エネルギー管理士
省エネに関する資格です。

半導体製造装置業界では、二酸化炭素の排出削減などの省エネ開発が流行ってます。

そのため省エネに関する知見を広げておくと他エンジニアと差を付けることができます。

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私も会社のお昼休みなどを利用して資格の勉強をしていました。

  1. エレキエンジニアの仕事内容
    半導体製造装置メーカーのエレキエンジニアは結構守備範囲が広く多彩な技術を習得することができる。

  2. エレキエンジニアに活かせる学部
    電気電子工学系で半導体の研究をしてなかった人が大半

  3. エレキエンジニアに活かせる職歴
    回路設計の経験は必須だが、半導体製造装置の開発は技術力の総合格闘技なので、様々な業界の知見を活かすことができる。

  4. エレキエンジニアに必要な資格
    取得必須の資格は特にないが、基本情報技術者、電気主任技術者3種、エネルギー管理士は役に立つ。
いとー@電気工学

半導体製造装置メーカーで働く電気設計エンジニアです。

■経歴:大学院電気工学専攻(半導体研究室)→地方でエンジニア(20代)
■特許出願:3件(半導体製造装置の制御技術関連)
■資格:電気主任技術者2種、3種、エネルギー管理士、基本情報技術者

当ブログでは「半導体製造装置メーカーの情報」や「電気設計エンジニアのノウハウ・資格」を発信します。

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